① 不登校の子どもたちの現状と可能性
不登校の子どもたちは、基本的に失敗を必要以上に怖がります。失敗すると思ったら、まずチャレンジしません。自分でできると思うことしか取り組まない傾向があります。また、最初は興味があると思って始めても、一度できないことや分からないことがあると止めてしまいます。そのため、能力はありながら、スキルが高まらなかったり、途中で投げ出したりしてしまいます。
その要因の一つに、対人関係の不安を抱えているということが挙げられます。「自分の意見をはっきり言えない」「わからないことが伝えられない」「人とどのように接したら良いかわからない」「相手の言っていることが理解できない」など、不安から人とのコミュニケーションをとりにくくなります。周囲とうまくいかず、ストレスを抱えてしまい、課題を乗り越えることができません。
また、自己肯定感の低さからできないと思ったら、チャレンジせずにすぐあきらめてしまうため、力が身に付きません。そのため、新しいことを知る楽しさやコツコツと学習することに意味を見出せず、学習意欲が減退していきます。IQ120あった子どもがIQ100になるとの研究もあるくらいです。
しかし、不登校の子どもたちの中には、もともと持っている能力は高く、特定の分野で突出している子どもが多いことがわかってきました。現在の学校教育では、すべての能力が求められる場面が多く、苦手な学習を強いられることとなり、結果的に自己肯定感が低くなり、すべてを投げ出してしまうという現状になっています。不登校支援センターパルクに通う子どもたちを調べてみると、次のような結果になりました。
一般的にIQは90〜109が平均値とされる中、調査の結果、
不登校の子どもたちはIQのバランスが悪く、
公教育の一斉指導には不適応な結果に。
しかし、得意な項目では非凡な結果を発露!
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不登校児童のうち一部の項目で
IQが110を超える児童の割合 -
不登校児童のうち一部の項目で
IQが120を超える児童の割合
そこで、私はこの不安や自己肯定感の低さに対して適切にサポートすることができれば、学習を継続することができ、子どもの本来持っている能力を引き出すことができるのではないかと考えました。
不登校の子どもたちの能力を引き出すには、興味があることを提示するだけではなく、カウンセリングを通して、自分の得意不得意を知り、コース修了までメンタル的なサポートを適宜行いながら、不登校の子どもたちにあったカリキュラムを提供することが必要であると考えています。
私が関わってきた不登校の子どもたちは、デジタル関連のものに興味をもちやすい傾向にあるため、まずはデジタルコースを用意し、取り組むことが最初の一歩になるのではないかと考えました。もともと持っている能力は高いため、コースを修了できればスキルが身につくだけではなく、それが自信となって「自分と向き合う」ことができ、社会とつながる可能性はとても高いと考えています。
② 企業の人材不足
一方企業では人材不足という課題を抱えています。「必要なスキルを持ち積極的に作業する人が不足している。人材紹介会社10数社に求人しているが紹介数も少なく、あってもマッチングしない」(帝国データバンク調べ)など、企業としては、その仕事に必要なスキルを持った人材確保が難しい状況があります。
特にDX化を進めて生産性を高めたいと考えている企業にとっては、デジタルに特化したスキルを持ったデジタル人材は必要とされています。ただし、不登校の子どもたちは、特定の部分にのみ能力が高いので、あれもこれもと総合的な能力を求められると力が発揮できなくなるため、できることを明確にして企業とつながっていくことが必要です。
③ ロールモデルとなる人材の育成
不登校という課題は、本人だけの課題ではありません。子どもが不登校になった保護者は、子どもの将来を不安視するあまり、無理に学校へ行かせようとしたり、子どもに不安をぶつけたりしたりするため、親子関係が破綻していることが多くあります。
学校に行かなくても実際に社会に出ることができたという、ロールモデルとなる人材を育成することは、本人の将来だけではなく、不登校に悩む保護者が子どもとともに不登校に向き合うことができるという、大きな成果をもたらすと考えています。